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今年は暖冬かなと思ったら、突然寒い日もあったりして、いつの間にやら冬の訪れを迎えてしまった。ということは入試の季節に突入したということである。
アニメ雑誌の広告欄を見ると、なんとまぁ声優の養成校の増えたこと。二十五年前、うちが開校した頃はこの種の学校はどこにもなく、声優志望のヤングは途方に暮れたものだ。いわば勝田はその道の先達、老舗ということだ。二十名クラスを一つ作れば良いと考えていたら、なんと受験生が百名を越えてびっくりした。
合格者は資質を備えたものだけに限ること、忍耐力を持ち学習に努力が出来るものであること、を念頭に置き決定した。
今もその方針は変わってはいない。老舗は暖簾を大事にする。希望者だからといってドンドン入学させてしまう事は止めよう。卒業時までに業界で愛され信頼される若者に育て上げよう。それが勝田の暖簾を守る最善の方策であると考えた。広告宣伝はできるだけ控えめにして、決して派手な世界、派手な職業ではないということを知ってもらおう。
そんな事を心掛けて二十五年やってきたら、卒業生は新人として業界にドンドン進出し始めたし、スタークラスの声優にまで成長した者も出て、勝田の名が業界で知られるようになった。
うちが開校した頃から世はアニメブーム時代の到来となり、アニメが大量に生産され新人声優大歓迎の風潮をますます上げ潮に乗せてくれたようである。
アニメが話題となり、声優の存在が語られるようになると、いくつもの声優養成のプロダクションが名乗りを上げ、そのうちにそれまで工業系、デザイン系の専門学校であったところまでが声優養成の科を増設して、声優志望のヤングを争奪戦の様相を呈してきた。
大金を投じた素晴らしい設備を擁する校舎を謳い、アニメ雑誌のカラーページで宣伝、夢見る若者にアピール。声優志望が一つの流行の様にさえなってしまった。
十二月八日の朝日新聞の報ずるところによれば、声優養成の学校としては最大手と思われるYアニメ学院が負債二十二億円で、社長は解任され、民事再生法が申請されたという。
こういう状態に陥った学校が再生されるものかどうかは法に疎いぼくには分からないが、それにしても学費二十二億円とは凄い。一体何人の入学生から集めたのだろう。と思わず電卓を手に取ってみたがやめた。二十二億円なんて声優養成とは無縁の金額だ。声優養成にそんな大金は不必要。地道にコツコツと演技の研鑽と人格の高揚に努めれば自ずと道は拓かれる。経営に当たっては学び舎を維持し、指導に関わってくれている人達に対する報酬が支払えればそれで十分。
そんな一昔前の考えでいるせいか、我が校舎は多少手は入れたものの二十五年前のままである。
2006年12月発行「Say You」第134号より抜粋 |