Say You!バックナンバー・コーナー

■ 学院長および講師からのメッセージ ■

『声優と演技C』 学院長・勝田 久

(2005.4.12 UP)
 一九四八年、戦後三年目の元旦は、雲一つない晴天のもと人々の笑い声と共に明けた。町を行く人の姿はまだ貧しく、つぎはぎだらけの軍服だったりモンペ姿だったりする。だが、どの表情も皆、穏やかで平和の素晴らしさを実感していた。
 明けて正月二日は東宝演劇部制作菊田一夫作「鐘の鳴る丘」の初日、僕の商業演劇初出演の記念すべき日である。胸をわくわくさせて有楽町駅で降り目の前の日劇を目指す。駅前はいつもに増しての人の群れ。

 日劇は巨大な円筒型をした劇場。戦時中は軍に接収されて風船爆弾の工場となっていた。学徒動員による女子学生の手により和紙がこんにゃく糊で一枚一枚接着され、やがて日劇の劇場内をいっぱいにさせる程の巨大な風船となっていく。それを千葉の太平洋沿岸に運び、ガスが注入され爆弾を抱えさせ、アメリカ本土へ向けて飛ばしていたのだ。そのうちの一個がカリフォルニアの森林に落下、山火事を発生させてアメリカ人を大いに驚かせた。

 その巨大な劇場日劇は戦後ダンシングチームを編成、映画とダンスショーで人気を呼んでいた。
 人の列が日劇をぐるりと取り巻いて二重三重となっている。やはりダンシングチームの人気はすごい・・・と思ってよく見ると、今日のこの列は先頭が日劇ではなく、その日劇の横手に入り口がある今日僕らが初日を迎える日劇小劇場の玄関口なのだ。人垣をかき分けてその玄関口へ。

 「緑の丘の赤い屋根、とんがり帽子の時計台、鐘が鳴りますキンコンカン、メイメイ子羊も鳴いている」テーマソングが賑やかに流れている。玄関横の畳八畳程の大看板には出演者の名が連記。そのラストの所に僕の名があるではないか。僕は思わず身震いした。

(つづく)
2004年11月発行「Say You」第120号より抜粋

以降、続々登場予定!

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