| テーマミュージックが一段と盛り上がり、ダウンして一瞬のしじま。開幕を告げるベルが鳴った。場内は既に満席、補助椅子を出しても足りず立ち見の客もいる。観客の全ての目と耳が舞台に注がれている。すごい緊張感。ドラマは進行し、笑い、泣き、怒り、そしてラストを迎え、大歓声のうちに幕は降りた。 今まで経験した学生演劇や新劇団の公演とは何かが違う。観客と出演者の息がぴったりと合って、その感動が大きな拍手となリ返ってきているのを感じた。客席を見回しても誰一人として知っている人はいない。これは仲間内の芝居ではないのだ。お客の表情はみな笑顔になっている。 稽古中は鬼のように怖かった作並びに演出の菊田一夫先生も笑顔で楽屋を廻っておられる。商業演劇に出演して驚いた事。それは三時間近い劇だというのに稽古は五日間しかない事。稽古開始日までに台本が完結していない事もしばしば。演出家の持つイメージは強烈鮮明で、役者の勝手な想像は退けられる事。これは美術・照明との関連も同じで演出家には妥協という言葉がないようだ。 この時更に感じたのは演出の厳しさ。菊田先生はNHKの連続ドラマの創作・演出と並行してこの稽古の演出をされていて超ハードなスケジュール。そのせいか神経過敏。新人であろうとベテランであろうと、超怒声で叱りつける。舞台稽古の日などは怒声だけでは間に合わず、客席の方から空を飛ぶように疾走して舞台を駆け上がり、ダメな僕にビンタをくらわす。 僕は自分の出番がない時に冷静に見ていた。 そのうちに菊田先生の気持ちがわかってきた。やはり役者に問題があるのだ。お年寄りの役者ほど一種独特な演技をして、先生を苛立たせる。 (つづく) |
| 2005年2月発行「Say You」第121号より抜粋 |
以降、続々登場予定!
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