| 好評で大入りが続くと、公演はロングランとなる。 そうなるとモク拾いの爺さんを演じていた中年の俳優はさっさと降りてしまった。どうやら役不足で毎日が不満であったようだ。困ったのはプロデューサー。「どなたかこの役をやってくださる方いらっしゃいませんか…」そのとき誰よりも早くてを上げて、 「その役僕にやらせて下さいッ!」と叫んだヤツがいた。血液型O方の出たがりやのおっちょこちょいだ。それは他ならぬこのボク。「えっ?君が?でも君は序幕のショッパナから警官で出ている人でしょう、ムリですよ。」 そう確かに序幕からラストまで出ている若い警官が僕の役。警部補に叱られてばかり。でも浮浪児からは優しいお兄さんと親われている気の良い奴。年輩の俳優からは「少年警察官の坊や」とからかわれたりしていたが、僕は大いに気に入っていた。 「間島さんご心配無用。警官が引っこんでからもく拾いの出まで八分もあります。袖(舞台袖)で衣装替をしてカツラを被って顔を汚しても五分あれば充分です。」 自信ありげな僕の発言に間島プロデューサーも納得せざるを得なくなって「じゃあお願いします」 かくしてモク拾いの役を手に入れ一人悦に入る。実はかなり以前からこの役を狙っていたのである。 序幕のラスト、舞台は薄暗い有楽町界隈のガード下。夕日の沈む彼方を見つめて涙を流している浮浪児の後を、上手から下手へとモク拾いの翁がトボトボ歩いて行く。時々立ち止まってはモクを拾い、 袋に入れてはまたトボトボ歩く。 物悲しげな曲が流れる。生バンドの演奏がつくのが菊田ドラマの真骨頂である。舞台は山場だ。これをどうしても経験してみたかったのである。 (つづく) |
| 2005年5月発行「Say You」第123号より抜粋 |
以降、続々登場予定!
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